早乙女乱馬が女になる日


第一話

 

 

 

 

早乙女乱馬17歳。一応男。

しかし、特異体質で水をかぶると女になってしまう。

ただし、お湯を被ると元に戻る。

 

乱馬はそんな特異体質をいいように利用し、

ちょくちょく女に変身し、道行く男や、九能先輩などに、

食事をおごらせたり、散々金品をたかったりしていた。

だが・・・。

いい気になりすぎると、えてして取り返しのつかなくなる事が起きるのである。

 

 

 

[あ〜、今日もバカな男ども騙して飯おごらせたぜ。]

意気揚揚と居候先の天道家に帰ってきた乱馬。

 

[あー、疲れたなあ。]

乱馬はそのまま疲れから女の格好のまま眠りについてしまった。

昨日も風呂に入った時以外は女だった乱馬。

ここ一週間は女でいる時間が大半を占めていた。

 

 

 

そして悲劇の幕が開いた。

目を覚まし、風呂に入ろうと起き上がった乱馬の下腹部に異変が・・・。

 

[うう、なんか重いぞ?]

[まじーなー・・・。]

[あかねに相談してみっか。]

乱馬はあかねに原因を相談してみる事にした。

 

[え?]

[下腹部が張るように重たいの?]

[あ!・・・もしかして・・・。]

[乱馬、下着見てみなさいよ。]

あかねは乱馬に自分の下着を見るように言った。

 

[ああ?下着?]

乱馬はとりあえずトイレへと走った。

 

[・・・・・・・・おおお!!!]

突然トイレで奇声を上げる乱馬。

戻ってきた時は放心状態だった。

 

[血・・・血が・・・・。]

[俺病気なのか?]

青ざめる乱馬。

 

[バカ言ってんじゃないわよ。]

[生理よ、生理。]

[ハイ・・・コレ。]

あかねは小声で乱馬に小さい箱を差し出した。

 

[ん・・・これって???]

[タンポン???]

[生理用品じゃねえか!]

乱馬が渡された物、それはタンポンの箱だった。

 

[バカ!]

[大きい声出さないでよ!]

[デリカシーがないわね、あんたったら!]

あかねは目を吊り上げて怒り心頭!

 

[そんなもん必用ねえよ!]

[ちょっと風呂入ってくるからよ!]

乱馬はあかねの差し出した箱を受け取らず、お湯を被りに風呂場へ向かった。

 

[あらよっと!]

 

“ザブン!”

 

乱馬は勢いよく湯船に飛び込んだが・・・。

 

[・・・あれえ?]

[元に・・・戻らないぞ?]

乱馬は呆然とした。

男に戻らないのだから。

 

[どうやら生理が終わるまでは男に戻れそうにないわね乱馬。]

一部始終を見ていたあかねは冷めた様子でタンポンの箱を乱馬に放り投げ消えた。

 

乱馬は自分の部屋に戻り、仕方なしにタンポンの挿入にチャレンジしていた。

 

[うー。なんかすごい違和感だなあ・・・。]

[男としてまだ女の子とHした事ないのに、]

[女として挿入感を味わうハメになるとは・・・。]

その日はそれで済んだ乱馬だった。

 

〜翌日〜

 

学校へ行くと・・・。

 

[おい、乱馬、なんかいつもと違うなおまえ?]

[早乙女〜いい感じじゃねえか、もう男になんか戻んなくていいぞ。]

男子生徒の視線がいつもと違っていた。

乱馬からはメスのフェロモンが分泌されていたのだ。

それも生理がなせる技。

今乱馬は完全な女になってしまっていた。

 

放課後猫飯店へ立ち寄る乱馬。

 

[あいや〜乱馬男に戻れなくなったあるね?]

シャンプーがあきれて言えば。

 

[婿殿も普段の行いが悪いからじゃ。]

[調子に乗ってずっと女の体でいるからそんな目にあうんじゃ!]

コロンも男から金品を騙し取る女らんまの悪行を非難した。

 

[過ぎた事はもう仕方ねえじぇねえか!]

[それより俺はいつ男に戻れるんだ?コロン?]

乱馬はすがるような思いでコロンに言った。

 

[うむ、女溺泉に浸かってしまった者をわしも何人か知っておるが・・・。]

[生理が来た後、なぜかそのまま男に戻れなくなった者も結構いるようでのう。]

[やはり女の体を長時間使用していたのが原因らしいが、]

[最初の生理が来てその後男に戻れた者の話じゃと、]

[最初の生理後から次の生理後までかかるらしいんじゃ。]

[自分の体を自由にコントロールできるように戻れるまでに。]

[早い話一ヶ月辛抱せねばならんと言う事じゃ。]

[まあ、婿殿は興味本位から、“間違い”はしないじゃろうがの。]

[女溺泉に浸かって女の体の方が自分に合うと感じたやつも居るようでな。]

[そのまま女として一生を送った者も何人かいるそうじゃが。]

 

コロンは乱馬が元の肉体に戻れるまでには、次の生理までかかると言った。

そして戻れるための一つの条件として、“間違い”を起こさない事を挙げた。

何故なのだろう?

乱馬は特にその部分に疑問も持たずにコロンの話を聞き天道家へ帰っていった。

 

[あーあ、後一月もこの体で過ごさないとなんねえのか憂鬱だなあ。]

それから数日乱馬は何事もなく日々を過ごし、生理もようやく終わった。

 

[あーやっとあの生理用品ともお別れできたぜ。]

[女って不便だなあ・・・。]

[でも慣れてくると男に戻るのが少しずつかったるくなってくるよなあ・・・。]

乱馬は心が少しずつ女に支配され始めているのに気づいてはいなかった。

 

 

そんな最中学校では乱馬の扱いを巡ってひとつの問題が起きていた。

乱馬が生理中は体育の授業を休んでいたのだが、

生理も終わり、授業を受けようとすると、更衣室の問題が上がった。

性別は男の乱馬だが、今は女である。

男に戻れれば何の問題もないのであるが・・・。

このままでは、男子生徒たちの好奇の視線の中で着替えをしなければならないのだ。

 

 

そして運命の、体育の授業前の休み時間になった。

 

仕方なく乱馬は教室で着替え始めたのだが・・・。

異様なまでに教室の中が静かで、そして男たちの視線は一点に集中していた。

乱馬はその異様な空気を感じ取り、着替えるのを躊躇してしまった。

自分が嫌がおうにも女である事を実感させられてしまう。

男子生徒はそれでもその先を期待し、目を血走らせ、乱馬に視線を注ぐ。

 

そんな中助け舟を出してくれたのはあかねだった。

 

[ねえみんな、乱馬は今女なのよ?]

[女として扱ってあげましょうよ?]

あかねは女子生徒に、乱馬が女でいる間は女子更衣室を使ってもいいように働きかけてくれた。

 

異様なまでの教室内の状況を見たほかの女子生徒も、

[うん・・・そうよね。]

[やっぱ、男子たちのヤラシイ視線の中で着替えさせるのはカワイソウよね。]

あかねの提案に納得し、乱馬は晴れて“女子生徒の扱い”を受け、

更衣室で着替える事になった。

男子生徒からは落胆の声が漏れたが・・・。

 

その流れから、乱馬がクラスの中でも仲良くするのは必然的に女子がメインになった。

言葉遣いも少しずつ男言葉が減り始め、仕草も女らしくなってきてしまった。

女性ホルモンが体内で活発に分泌されている影響なのだろうか?

 

乱馬とあかねの関係も微妙に変化してきていた。

今までは男と女、許婚という事もあり、

何かと反発する事が多かったのだが、

最近は女同士という事もあるのだろうか?

とても仲良く過ごしていた。

家の中でもあかねは乱馬が男時代、間違っても自分の部屋に入れる事はしなかったが、

最近では自分の部屋に招き、色々と芸能人のネタで盛り上がったりもし、

かすみさんの家事の手伝いも始め、

かすみさんとの距離も“女として”かなり近くなった。

ただ、それはあかねが乱馬を男として意識しなくなった現われでもあるのだが。

 

 

 

そんなある日、決定的な悲劇が起こってしまう!

 

乱馬は下校途中ある人物と出会う。

 

[ううう、あかりちゃん・・・。]

それは良牙だった。

公園の片隅で肩を落としていた良牙を見つけた乱馬は・・・。

 

[どうしたのさ、良牙?]

[なにかあったの?]

[よかったら、話してみてくれないかなあ・・・。]

[この俺に。]

と、男時代には見せた事のない優しい言葉をかけた。

 

[おお、乱馬久しぶりじゃねえか?]

[どういう風の吹き回しだよ?]

[この俺に優しい言葉をかけるなんてよ?]

いつもと違う乱馬の態度に驚く良牙。

以前は仮に女の時でも、

こんな優しい言葉をかけてくれた事は今まで一度たりともなかったのだから。

 

[ん〜、別にいいじゃん、そんな事。]

乱馬は照れ笑いした。

 

“ど、どういう事だ?”

“今日は乱馬のやつがかわいく見えてしまう”

“あかりちゃんにふられたばかりだからなのか?”

 

良牙は乱馬が完全に女になってしまってから始めて会うので、

乱馬が今、完全な女の体である事を知らなかった。

今までのような“擬似女”の乱馬ではない事を。

“擬似女”状態の乱馬は言うまでもなく、心も体も男が基本になる。

女の体に変身しても機能は男のままなので、

生理も来なければ、男とHしても妊娠もしない。

だからお湯を被ればたやすく男の体に戻る事が出来たのだが。

 

 

 

[そっかー。]

[あかりちゃんにふられちゃったのか。]

[あかりちゃんもバカだよな。]

[良牙のようないいやつをふるなんてさ。]

乱馬はそれから良牙の話を聞いた。

そして優しく良牙を励ました。

 

自分の真横にちょこんと並んで座った乱馬に良牙は・・・。

 

“やっぱり、な、なんかいつもと違うぞ、乱馬のやつ”

“ううう、乱馬にすごく女を感じちまう”

“雰囲気といい、匂いといい、完全に女の子だ”

“や、やべえ・・・”

 

今までの悪友、そしてライバルとは違う感情が芽生え始めていた。

 

[な、なんか乱馬今日は優しいし、]

[“かわいいじゃねえか!”]

 

良牙は乱馬に面と向かってかわいいと言った。

 

[え???]

[今なんて言ったよ、良牙?]

予想もしていなかった言葉に乱馬も驚いたけど、

[いや、その、なんかうれしいな。]

[この姿でかわいいって言ってもらえるのも。]

乱馬は素直に喜んだ。

 

[俺が女だったら、惚れちゃうよな、良牙に。]

[・・・て、今女なんだな・・・俺。]

チョットサービスのし過ぎかな?

変に思われたらどうしよう?

乱馬は言った後に顔を赤くしてしまった。

 

[ら、乱馬・・・。]

良牙は乱馬のそんな女の子らしい仕草に思わず肩を抱いてしまった。

 

[わ、わりい。]

良牙は慌てて肩から手を離すが・・・。

 

[キ、キス位なら・・・いいぞ。]

[良牙がそれで元気が出るんなら。]

乱馬はあかりちゃんにふられた良牙を励ますために、

キス位なら許してもいいかなと思ったのだが。

 

良牙は乱馬の何気ない一言に、もう“それ以上の事を頭に描いていた”。

男はキス位でやめられる人種ではない。

そんな事、乱馬はわかりきっているはずたったのだが、

女でいる時間が長かったために、微妙に状況判断が狂ってしまったのだろうか。

 

[と、とりあえず俺の家にでも来いよ。]

[ここじゃなんだしさ。]

もう良牙の頭の中では“すごい事”をイメージしていた。

 

乱馬は良牙の表情から“異変”をようやく察知し、

[あ、俺、そろそろ帰ろうかなあ・・・。]

良牙が自分を家に連れ込みどうするのか読めたために、

そそくさと帰ろうとした。

 

[そっか・・・そうだよな。]

その瞬間、良牙は今まで見せた事もないような寂しそうな横顔を見せた。

 

良牙のそんな一面を見てしまった乱馬は、

少しばかり“キュン”としてしまった。

 

“しょうがないな・・・お茶くらいは付き合ってあげるか”

女の優しい感情が勝ってしまい・・・。

 

[わかったよ。]

[チョットだけ寄ってあげるよ。]

良牙の家へ行く事にした。

 

 

 





以下次回

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